アベノミクスとは?
アベノミクスとは第二次安倍内閣がデフレ脱却のために掲げた一連の政治政策で、エコノミクスにかけた造語です。具体的なその内容ですが、3本の矢と言われる3つの政策からなっています。
まず1つ目が大規模な金融緩和政策です。デフレの原因のひとつが市場に流通するお金の少なさがあります。そのため、無制限の量的緩和と呼ばれる政策にて市場に多くのお金を供給しました。また、これにより円の流通量が増え、結果として円安になるため輸出業の業績改善、株価上昇によりデフレを脱却する狙いがあります。
2つ目は、公共事業への財政投資です。これにより金融緩和によって市場に投入されたお金を企業に使ってもらうことや雇用の促進により景気を回復させるものです。
そして3つ目が企業への投資や人材活用、規制緩和など民間企業の競争力を高めるための政策です。
アベノミクスによって景況感は悪化している?
かなり大まかにアベノミクスの概要について説明してみたのですが、はっきり言えば多くの人が具体的な政策内容にあまり興味がないのではないでしょうか。そして、興味があるのは実際に私たちの生活の水準を上げてくれるのかどうかという点だと思います。
実際に第二次安倍内閣になった後は株価がバブル期以来の水準に達したり、大学新卒の求人倍率の向上や、ボーナス額の増加といったポジティブなニュースを耳にすることが多くなりました。しかし、このようなニュースが出るたびに必ずといっていいほど「景気回復の実感がない」といった声が聞こえます。
「たしかに株価がバブル期以来の水準になったとしても、一般市民はそれほど大きな投資資産を持っているわけではありませんし、ボーナスなど賃金の増加についても、アンケートの対象は大企業となっているため、中小企業で働く人には実感がないというのも当然です。」と以前政治家だった畑恵の著書に書かれていました。
また、実感がないだけではなく消費税は5%から8%に増税されていたり、デフレ脱却に伴い物価は上昇傾向にあるわけですから、むしろ景況感は悪化していると感じても不思議ではありません。
私自身も特に収入が増えたわけでもないので、スーパーなどで買い物をしていると今までと同じものを買っていても値段が高いと感じることが多いのですが、それでも景況感が悪くなったという感じはありません。
というのも私は30代半ばなので、大学卒業時の求人倍率が低く就職難と言われ、就職してからリーマンショックなどもあり、社会人になってからは長く不景気を体感していることが大きいと言えます。不景気の最もつらいのは社会全体になんとなく「これから先に経済が右肩上がりになることはないのではないか。」といった雰囲気が蔓延してしまうことです。
今の状況が悪くても見通しに希望が持てれば気持ちも楽になるのですが、景気の良し悪しなど当然、個人の力ではどうすることもできませんし、就職後ずっと不景気だと感じていたため、これから先の経済にポジティブな感情が抱けませんでした。
しかし、私が大学生から就職した頃に比べると、例えば夜の飲食街など明らかに現在の方が人が増えていますし、新しく出店するお店も多くなったと感じます。また、一時期の激安ブームも落ち着き、少し価格が高くても良いものを提供するお店も増えているようです。
他にもアパレルショップを見てみてもファストファッション一色だった少し前の時代からは徐々に変化しつつあります。このように現在は街や人に少し明るくふわふわとした雰囲気が漂っているように感じられます。
景気回復の実感がないのはなぜか?
このように個人的には景況感が良くなっていることも実感できるのですが、先に述べたような「景気回復の実感がない」と感じるのはなぜなのでしょうか。その大きな原因のひとつに高度経済成長期の影響が考えられます。
私の周囲で「景気回復の実感がない」という人は自分より年齢が上の人たちが多く、現在の状況を高度経済成長期と比較している場合が多いように感じられます。
ちなみに第二次世界大戦後から高度経済成長期を経てバブルがはじけるまでの経済成長期は有史以来、異常な成長率といわれており18世紀後半にイギリスで起きたあの産業革命時よりも成長率が高いと言われています。そのため、高度経済成長期を基準にしてしまうと、なかなか景況感の改善を感じることは難しいのではないでしょうか。
ただ、アベノミクスを手放しで称賛するわけではありません。アベノミクスによる政策は景気回復のための根本的な処置というよりも、痛み止めのような一時的な効果でしかない可能性があります。そして薬の痛み止めがそうであるように、痛み止めを使用しすぎると必ずその副作用が表れるはずです。
アベノミクスは劇薬とも言われていてこのまま緩和政策を取り続けることは危険だと感じている国民も多いはずですが、その反面、心のどこかでは「もっともっと経済的に豊になりたい。」を望んでいる部分も否定できません。現在の政策はどこかで出口戦略を取らなければならなくなりますが、私たちの「足るを知る」という心がアベノミクスを成功させるかどうかのカギなのかもしれません。
最終更新日 2025年7月24日